鎌倉稲村ヶ崎の海岸線国道134号沿いに古い喫茶店がある。
Taro‘s
タローズと読む。私を含めた湘南の海岸沿いのライダーにとっては、もう伝説になっている店だ。
私が通っていた20数年前の時点でかなり古く見えたので、30年くらい続いているのだろうな。
もうなくなってしまった稲村ヶ崎海水浴場前にあって、でかい窓から見える江の島の向こうに沈む夕陽は最高だ。
青二才のバイク乗りだった頃、稲村の脇にいつもバイクが停まっている喫茶店があった。例にもれず、やはり入りにくい雰囲気が山盛り。
大人への背伸びがしたかった私は、勇気を出してドアを開けた。
店主はチヨさんという美しい女性。チヨさん自身もバイクが好きで、店の中にDUCATI F3が置いてあった。
お客はバイクに乗った果てしなく怪しい男たちばかり。話が面白くて職業不詳で、メディアで“ちょい悪”などと言われるはるか昔に筋金入りの“リアルちょい悪”な男たちに囲まれて日々を過ごした。
「オチヨ!」などと呼び捨てにしながらも、結局私も含めてみんな美人のチヨさんが大好きだった。
大学の授業が空けばたむろし、雨が降っても通い、昼からビールを飲んで、意味もなく夕陽を見続けた。
そんな怪しい男たちとの日々は、チヨさんの事情で卒業間近に終わってしまった。違う店主になって、それ以来行っていない。
先日、私の留守中にハーレーに乗ったお客さんが来られた。帰りがけに挨拶だけしたのだが、走り出したら後ろに「Taro’s」の文字。妻に聞いたらあの店のハーレーチームの人とのこと。
20年たってまたつながった。 今の自分も同じことをやっている。今度行ってみるか。人生はかく楽しい。
ニュースレター2012.7号より
今日、このお客様がまたみえられました。直管のハーレー。 私は45歳になっても、バイクの音はでかければでかいほどいいと本気で思っている。
“優しい男”になんてなるものか。ははは。